地主が死亡した場合借地権の契約はどうなるの?
地主の死亡により借地権者にとって何より心配なのは契約への影響だと思います。本コラムでは、地主の死亡で借地契約はどうなるかについてご説明しましょう。
地主が死亡しても貸借契約に影響しない
地主と平素のお付き合いがない借地権者の場合、突如として連絡がつかなくなるケースも多々あるでしょう。なぜならば、地主の死亡によって別の方が引き継ぐときも、地主側への連絡義務がないからです。つまり借りている側に対して許可や了承を得る必要がないということになります。
不動産業者を介在させて地代の振り込みをしていた場合は、そこから地主の死亡は告知されるでしょう。しかし、直で振り込みしている場合、地主の死亡で突然、何もかも途切れてしまうことも考えられます。
地主側でも身内の死亡でそれどころではなく、借地権者への連絡などはかなり後回しになってしまうと思われます。すぐさま相続人に契約の引き継ぎなどをしてくれる方はまずいらっしゃらないでしょう。
そのあと借地権の契約更新などがあれば、いきなり連絡が来るということになります。それまで地代を滞納していた場合、そこですべて払うことになりかねません。
つまり、地主が死亡しても借地契約には影響はありません。ですから、いちばんいけないのは「支払先がわからないなら地代は支払わなくて良いんだよね? 」などとタカをくくること。地代の支払いは継続すべきです。
支払先不明なら「地代の供託」がある
地主の死亡で、地代をどこに入金すれば良いかわからなくなってしまっても、地代の支払いは怠らないようにすべきであることを書かせていただきました。その場合、まずどうしたら良いでしょうか。
■身内や近隣に聴いてみる
地主の身内を知っている場合はまずそこに事情を話し、連絡先を教えてもらいましょう。身内がわからないときは近隣で生前の地主と親しかった方にもたずねてみましょう。しかし、個人情報の漏洩に敏感な時代だけに、なかなか教えてもらえないかもしれません。
■もしどうしてもわからないとき
地主の死亡で支払先がわからなくなったときは住んでいる地域の供託所に地代を支払いましょう。これを「地代の供託」と言います。供託は金銭・有価証券、もしくは物品などを必要書類と同時に受理してもらい、そのまま預かってもらうという意味です。
■供託の条件
地主の死亡でどこに入金したら良いのか不明な場合「地主の受領不能」(民法)という供託条件に該当。また、遺産分割協議が決裂した結果「自分が地主である」と決め込んだ遺族たちから、借地人宛に重複して地代の請求がきてしまい、誰に払うのか自己判断ができない場合には「債権者不確知」という条件に該当するため、供託が可能です。
■供託所=法務局
地代の供託をどこで預かるのかと疑問に思うかもしれませんが、法務局・地方法務局やその支局などが供託所です。指定された書類の提出と同時に地代を支払うことで、正式に受理されれば供託は成立します。
供託所については「不動産の重要事項説明書」の1ページ目に、「供託所等に関する説明」という項目があり、そこに書かれていますので確認してみましょう。
地主死亡で売却するならこうしよう
どこに地代を入金すれば良いか分からない場合、もしくは複数の地主から同時に地代を請求されてしまった場合「不動産の重要事項説明書」の1ページ目に書かれている「供託所等に関する説明」という項目に記された所定の供託所で地代を供託するべきことをご説明しました。
借地権者がもう借地権を必要としていない場合、失礼かもしれませんが、地主の死亡は不要な権利を処分する上では好機と言えます。最後に「地主死亡における借地権処分におすすめの方法」をご紹介しましょう。
まず、先代地主の死亡で、いまの地主がどこにいるかわからない場合、自分が直接地主側に赴くには、調査代金がかかるなど、いろいろとめんどう。わかっている場合も当事者同士での直接交渉はトラブルの元です。
この場合、もっとも推奨できるのが「借地権問題に経験法な仲介業者に仲介を依頼すること」でしょう。豊富な経験・ノウハウを有し、法律家などのエキスパートともパイプをもっています。
そのため、借地権者と地主間のデリケートな人間関係を損なうことなく、プロならではの手法で交渉し、すみやかに解決してくれることが期待できます。この機に借地権を処分したい借地権者の方は、借地権・底地問題に精通した仲介業者をさがして、相談してみましょう。
まとめ
地主の死亡で借地契約に変化はあるかについてご説明しました。地主が死亡して、地主が代わる場合でも、地主側は基本的に借地権者には連絡義務はないこと、地主が死亡しても借地契約にはまったく影響しないため、地主の死亡で地代の入金をどこにしたら良いか不明な場合でも、地域の供託所に地代を支払うほうが良いことがわかりましたね。
また、地主の死亡は不要な借地権を処分する上では好機でもあるので、このタイミングで借地権を売却してしまうのも一案です。しかし、借地権の売却には地主の許可が不可欠なので、居場所のわからない相手に個人で交渉しようとすれば何かとめんどうです。
しかし、近場の不動産業者に安易に依頼してしまうことで、自分で交渉するのと変わらない結果に終わってしまうおそれもあります。くれぐれも「借地権・底地問題に精通した仲介業者に依頼すること」を忘れないでください。