底地の相続税が支払えない!?物納より売却がいい理由とは?
相続する立場になったら相続税の納付が義務となり、現金一括払いができなければ、延納手続きをし、分割で支払う形となります。それでも期限内に完済するのが難しい場合、物納という金銭以外の相続財産自体を国に納める制度か、底地の売却という道が残されています。今回は、相続税の物納と売却について、解説していきます。
相続税の納付の方法と期限は?
相続税は、原則として現金で一括納付しなければなりません。その期限は、被相続人が亡くなった日、相続しなければならないことを知った日の翌日より、10ヶ月以内に納付することとなります。2017年からは、国税庁長官が委託する業者のホームページからも、クレジットカード決済で納付できるようになりました。
■相続税の納付方法の種類
相続税の納付方法は、上から優先順位の並びで、以下の通りになっています。
・現金納付:最寄りの税務署・銀行・郵便局で支払うか、クレジットカード決済する。
・現金納付が困難な場合、賃料収入や労務収入などの収入で支払い可能なら延納が認められる。
・事情があり現金納付が困難で、賃料や給料といった収入がなければ物納が認められる。
■物納とは?
「物納」とは、金銭によって相続税を納付することが難しく、さらに延納も困難な場合、相続した財産自体を現物納付する制度になります。この制度には厳しい条件が設けられているので、利用する場合は、それをクリアしなければなりません。また、物納が認められる財産も、不動産、国債、船舶、株式といったものに限定されています。
物納が認められる条件
物納が認められるケースは、以下の通りになっています。
まず一つ目は、延納しても金銭での納付が困難で、かつ、その納付が困難な金額設定を限度としているケースから見ていきましょう。延納により、金銭での納付が困難であるかの判定には、相続でどのような財産を引き継いだか、また納税者の資産所有状況、そして収入状況などから総合的に見て勘案する流れとなっているようです。さらに、そう遠くない将来、確実な収入(退職金の給付も含む)や、臨時の支出(事業用資産の購入なども含む)も考慮するとしています。
二つ目も確認していきましょう。物納予定の財産は、納付する相続税の計算の基罷となる相続財産の中で、日本国内にあり、次の種類に該当するものになります。
・国債・地方債・不動産・船舶
・社債・株式・投資信託あるいは貸付信託の受益証券
・動産
※後順位にあたる財産は、何らかの事情があると税務署長が認定した場合、ならびに先順位の財産に、適当な価額がついているものがなかった場合に限り、物納とすることが可能。
そして三つ目は、物納予定の財産が、管理処分不適格財産にあたらないものであることが条件です。四つ目は、物納予定の相続税の納付期限内に、物納手続関係書類を物納申請書に添付して、提出することを留意してください。
相続税と物納について
「相続税を課税するほどの財産を受け取るとなると、納税はそんなに難しくはないのでは? 」
「底地を持つのはややこしそうだし、国に物納してしまった方が、面倒がなくていいんじゃないか? 」
そんなイメージを持つ方もいるかもしれません。日本人の相続財産のおよそ半分は不動産で、その中でも親や親戚から引き継いだ財産が不動産のみだった、という事例も実際多くあります。被相続人亡きあと、法事や被相続人関連の諸手続きや、遺産分割協議といった雑務をちまちまやっていると、納付期限の10ヶ月が、いつの間にかやって来てしまった、ということも起こりかねません。
また、何かしら現金収入があったり、現金化が見込める土地や建物の所有をしているとなると、売却して手放さなければならなくなるでしょう。それによって得た現金は、生活維持費用を省いた金額すべてを延納に回さなければなりません。
つまり、あらゆる要因が相続税の物納を阻止することとなり、かんたんには物納が認められないということになります。
まとめ
相続税の物納が認められたとしても、延滞税や利子税といった税金の支払いもさらに発生します。これらは、金銭のみの納税となるので、物納では通じません。要するに、物納が認められたからといって、現金の支払いが帳消しになるということはないのです。
物納についても知っておく必要はあるものの、延納という手段でなくとも、底地の売却など事前対策もしっかり検討しておくといいでしょう。