借地権の登記はした方がよいの?登記をするメリット・デメリット
借地権とは、建物を建てるために土地を借りる権利のことです。借地権には地上権と土地賃借権があります。地上権には登記協力義務があり登記されていることが一般的ですが、賃借権には登記義務がないため登記されていないことも多いようです。ここでは借地権を登記するメリットとデメリット、登記する場合の手続き方法や費用について解説します。
借地権の登記はしなくてはいけないの?
借地権のうち、地上権は地主に登記協力義務があるため、登記しなくてはなりません。登記はトラブル時に権利を法的に主張できる「対抗要件」になるため、対抗要件を備えておくためにも登記はしておいたほうがよいでしょう。
一方、賃借権には登記義務はなく、登記には地主の承諾も必要となります。借地人は借地に自分の名義で建物を建て、建物の所有権を登記することで対抗要件を備えられるのです。賃借権には抵当権も設定できないので、賃借権は必ずしも登記する必要はなく、実際登記されていないことがほとんどとなっています。
借地権の登記をするメリット
借地権の登記で、地主にメリットがあるのは定期借地権のケースになります。一般定期借地権では、公正証書ではない書面での契約も認められているので、契約書類をなくしてしまうと土地が定期借地であることを証明できなくなってしまいます。
土地を借りた人が契約期間満了時になっても土地を返還してくれない場合などに、定期借地権を登記しておけば契約書がなくてもその土地が定期借地であることの証拠になり、土地の明け渡しを求めることが可能となるのです。また、借地に建てられた建物が第三者に譲渡された場合でも、定期借地権の登記をしておけば契約期間満了時に土地の返還を求めることができます。
借地権を登記するメリットがあるのは、地主だけではありません。借地人も借地権も登記をしておくことで、たとえば地主が土地を売却して土地の所有者が変わり、新しい所有者から急に土地の明け渡しを求められた時などに、契約期間まで土地を借りる権利があることを主張できます。
借地人が借地に建物を建てて所有権を登記していれば対抗要件になりますが、建物を建てていない場合は立札を建てることで地主に対抗できるのです。ただし、立札の効力は2年しかありません。借地権を登記しておけば、立札を立てて対抗する必要もなくなります。
借地権の登記をするデメリット
借地権の登記をするデメリットは登録免許税を納めなければならず、登記手続きを司法書士に委託する場合は委託報酬がかかるなど、費用が発生することです。
登記に必要なさまざまな書類を用意する手間もかかります。これは土地を所有する地主と、土地を借りる借地人どちらにとっても同じです。逆に、借地権を登記するデメリットは「費用がかかることと手間がかかることだけ」と考えることもできます。
借地権設定登記の手続き方法
借地権の登記方法は、インターネットを利用した電子申請(オンライン申請)と、書面による申請の2つの方法から選ぶことができます。書面による申請の場合、申請書と添付書類を準備して、登記する不動産を管轄する法務局に登記申請を行いましょう。
賃借権の登記に必要な書類は、地主の場合は賃貸借契約書、印鑑証明書、登記識別情報もしくは権利証、固定資産税評価証明書、実印、本人確認書類です。借地人の場合は認印と本人確認書類になります。固定資産税評価書は、市区町村の役所や出張所などで取得できるでしょう。
また、窓口だけでなく郵送で取り寄せることも可能です。借地人が建物の所有権保存登記を行う場合は、住民票の写しと住宅用家屋証明書を用意しましょう。いずれの場合も、司法書士に手続きを委託する場合は委任状が必要となります。登記申請の際は登録免許税を納めなくてはなりません。
借地権設定登記の登録免許税額は、固定資産税評価額の1%です。たとえば固定資産税評価額が2,000万円の場合、登録免許税額はその1%である20万円となります。固定資産税評価額は実勢価格のおよそ70%程度といわれているため、2,800万円程度で売買されている土地の借地権設定登記にかかる登録免許税は20万円程度となるでしょう。
登記の際は登録免許税分の収入印紙を申請書に貼り付けるか、あらかじめ銀行などで登録免許税の振込を行い、領収書を申請書に添付します。法務局が申請内容の審査を行い、処理が完了すると登記識別情報と登記完了証を受け取って手続き完了となるのです。借地権の登記手続きは司法書士に委託できますが、別途司法書士に支払う委託報酬が発生します。司法書士に地上権や賃借権の登記手続きを委託する場合、委託費用の相場は3万円程度です。
借地権の登記は、もしもの時の対抗要件になります。賃借権には登記義務はなく、登録には手間と費用がかかるでしょう。しかし、万が一契約書を紛失してしまったときやトラブルが発生した時に役に立ちます。地主にとっても借地人にとっても安心材料になるため、地上権だけでなく賃借権についても一度登記を検討してみてはいかがでしょうか。