地代の値上げを要求されたら借地人は応じないとダメ?

公開日:2020/06/15  最終更新日:2020/06/16

借地人は土地を借りているため、どうしても地主よりも弱い立場になりがちなため、地主から何か要求された場合には「応じなければいけない」と思ってしまう傾向にあります。

もし地主から地代の値上げを要求された場合、しかもその値上げが納得できない上げ幅だった場合、借地人はどうすれば良いのでしょうか。

地代の値上げには法的な条件がある

地主から地代の値上げを要求されたときでも、すぐに応じる必要はありません。むしろ、すぐに応じず、値上げ理由を精査する必要があります。

なぜならば、地主が地代を上げるための条件が借地借家法11条1項に定められているからです。以下の条件に当てはまっているかを、まずよく確認しましょう。

■借地(地主には底地)に対する租税公課が変化(上昇)したとき
■地価や物価の上昇でその土地の価格が上昇したとき
■周辺の借地(底地)の地代に比較して不当に低かった場合

このいずれにも当てはまっていないと思った場合にはすぐに値上げに応じてはいけません。しかし、借地人が地代の値上げに応じないと、従来額での地代の受け取りを拒否する地主もいます。

その場合は供託所に地代を供託することで、地代の支払いを滞らせないようにしましょう。ちなみに一般的な地代の相場は、住宅地域においては「固定資産税+都市計画税の3倍~5倍」商業地域においては「7倍から8倍」と言われています。

借地人が地代値上げを不服とする場合

地主から地代の値上げを要求されたときでも、すぐに応じずに、借地借家法11条1項に定められている条件に当てはまっているかよく確認すること、もし従来額の地代の受け取りを拒否されても供託所に供託することが大切であるとご説明させていただきました。つぎに借地人が地主からの地代の値上げに同意できない場合、どうするかについて書かせていただきます。

■まずは借地人と地主でよく話し合う
最初は借地人と地主が地代の値上げについて話し合う場を設けましょう。立場の違いから生じる意見の相違を埋めることはなかなかむずかしく、また、時間を要すると思われますが、双方が納得するまで根気良く話し合いを続けることが肝要です。

■話し合いで解決しないときは民事調停
話し合いで解決できなかったとき、借地人がすべきことは裁判所への民事調停を申し立てです。調停委員会立ち合いの下、簡易裁判所にて借地人と地主と再度話し合います。

■民事調停で解決しないときは裁判
民事調停でも解決しないときは民事裁判に移行です。裁判によって地代をきめてもらうことになる訳ですが、長い期間がかかる上、経費もかかるため、精神的にも疲弊することが予想されます。

■裁判中も地代の支払いは免除されない
そして、裁判中も借地人は地代を免除されることはなく、支払いもしくは供託を続けなければなりません。

これを個人でやるとなればたいへんな労力を必要とします。現実に実行できる借地人は限られてしまうでしょう。

合意に至らないときは売却も視野に入れよう

借地人が地主からの地代の値上げに同意できない場合、まず話し合い。決裂した場合は民事調停→民事裁判と段階を踏むこと、裁判に至れば、たいへんな時間・費用・労力がかかることをおわかりいただいたところで、最後に、借地権の売却による解決についてご紹介しましょう。

こじれてしまった場合、裁判などに至る以前に借地権の売却をすることもひとつの方法です。借地権によって得ている収入がさほどでもない場合など、すみやかに決断して売却に舵を切るほうが得策だと思います。

その場合、すでに話し合いでこじれているため、借地人本人だけで売却に動くことはあまり良くないでしょう。借地権に精通した不動産業者に売却を依頼するのがおすすめです。

また、借地権を手放せない場合も、そうした業者への相談が有効でしょう。なぜならば、専門業者はこじれた問題を多数ときほぐしてきた経験を持ち、解決に導くノウハウを有しているからです。

借地人の立場で考え、行動してくれる業者を見極め、ホームページの相談フォーム、あるいはメール、電話でまずは相談してみましょう。

まとめ

地主から地代の値上げを要求されたら借地人は応じないといけないのかについてご説明しました。結果的には納得しないときは応じる必要はなく、むしろ値上げ理由が借地借家法11条1項に定められている条件に当てはまっているかよく確認すること、そして裁判に労力をかける前に借地権問題に精通している不動産業者に相談をすることがおすすめでした。

もし地主のムリな値上げ要求に困っている借地人さんがいらしたら、ぜひ参考になさっていただきたいです。とにかく、裁判は人間関係をこわしてしまうこともあるので、できれば避ける方向で考えていただきたいと思います。

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