借地権を相続する際にありがちな問題とは?

公開日:2020/05/15  最終更新日:2020/05/19

親から遺産相続するのはよくあることですが、借地権を相続することもあります。実家が借地に建っている場合、住宅と同時に借地権を相続するなどがその一例です。

しかし、一般的に所有権のある不動産を相続するのとは違って、面倒やトラブルもありがちです。本コラムでは借地権を相続する際にありがちな問題についてご説明したいと思います。

借地権を相続することで生じる問題とは

借地権は権利ですが、一般的な遺産と同じく相続の対象となります。配偶者・こどもなど、法定相続人が相続するのが通常です。

民法の定めるところにより、誰の承認も必要としないため、相続には地主の許可は要りません。しかし、ほかには何かとやっかいな問題が付きまといます。

■相続者が複数の場合に生じる問題
借地は土地活用に足かせが多いなど、さまざまな理由から現代ではあまり人気のない資産なので、複数の相続人で共有の名義になってしまうことがあります。あとで売却しようとしても全員に話しを取り付ける必要があり、非常に面倒です。

■相続税評価額が高めになる問題
相続税評価額は路線価に土地における借地権評価の占める割合=借地権割合を掛け合わせて求められます。地主よりも借地人の割合が高めなので、相続税にも影響が大きいでしょう。

■売却に地主の許可を得なければならない問題
借地権は売却可能ですが、地主の許可が必要です。現代では不動産業者などを介して地代も振り込みが多く、借地人は顔も知らない地主と折衝しなければなりません。

■更新時にトラブルになりやすい問題
更新のときは顔も知らない地主と合うことになるか、もしくは書面(新規の契約書)が送付されて来るでしょう。そのとき地代の値上げや高額な更新料を請求されるケースもあります。

■借地にある家に住む予定がなければ管理費がかかる問題
借地権と共に実家を引き継ぐと、相続人が遠方にいる場合は管理を委託しなければならず、費用がかかります。賃貸物件も親の代とは周辺条件が変化していて入居者が見つからないなど、建物がうまく活用できない場合は地代と管理費をただ払い続けることになりかねません。

時代の変化で借地は不人気物件に

借地は活用の自由度が低いことなどが理由で、時代と共に不人気物件となっています。背景にはどのような事情があるのでしょうか。

■時代の変化による影響
戦前戦後の日本は「持たざるひと」が一般的で、土地を買わずに家を持つために多くの方々が借地契約をしました。また、ビジネスをはじめるときも元手をかけずにはじめるために借地契約をする方が多かったようです。

加えて、当時の法律では借地人は手厚く保護されており、借地すること自体のメリットも大きかったと言えるでしょう。しかし、1992年に施行された借地借家法により、今度は地主の権利のほうが手厚く守られるように変わってしまいました。

■相続税が発生するケースは増加した
借地のメリットが減少した現代、日本には裕福な方が増加。一般的な売地や分譲住宅であればローンを組めば購入できますので、借地は敬遠されるようになりました。

地代は「ちりも積もれば…」で、長期間支払い続けることで土地の購入費と大差ない状況となります。さらに時を経て、相続人の世代では多くの資産・収入がある方も増え、借地権を相続するために相続税が発生することも増えました。

旧法による借地のメリットによって、1980年代初頭あたりまで借地は相続されることが多かったでしょう。そして当時はまだご近所付き合いも深く、おそらく借地人も顔を合わせて地主に地代を払い、親しく会話を交わすような関係が一般的で家の建て替えなどもスムーズに許可されたと思われます。

売却が最適だが、相続人が直接交渉すると…

相続しても相続税評価は高いのに何かと問題の多い借地・借地権。面倒な事態に巻き込まれないよう、相続前に売却するのが最適でしょう。

しかし、既述の内容でおわかりのとおり、さまざまな理由から借地・借地権は一般的な不動産市場では人気がなく、売却価格もどうしても低くなってしまうのが実情。そこでおすすめなのが日頃から借地権問題に取り組んでいる専門的な借地権仲介業者への相談・売却依頼です。

そうした業者は、独自の販売ルートを所持。一般市場で買い手をさがすより有利な上、仲介業者なので借地権相続人に寄り添った売却価格になるように配慮してもらえます。じつは売却先は一般には地主が最適と言われています。

通常、地主は借地権が還ってくれば底地は通常の私有地になるため、喜んで買い取ってくれる傾向があるからです。ところが、現代では先代の借地権人と違って、顔見知りでない方がほとんど。

相続人が、いきなり地主に会って「借地権を買い取ってください」とは言いにくいでしょう。気むずかしい地主だった場合など、下手をすれば話がこじれて人間関係をこわす危険性もあります。

最悪は、何年も話が進まず、借地権が塩漬け状態になるかもしれません。そうした意味合いからも、専門的な借地権仲介業者に相談・依頼するのが安全だと思います。

まとめ

借地権を相続する際にありがちな問題についてご説明しました。相続人本人がひとりで立ち向かうには手に余りそうな問題がたくさんありましたね。

そして、こうしたことを自分ひとりで行うのは何とも不安で心もとないこと。専門家のアドバイス・サポートがほしいところですよね。

相続している場合には借地権仲介業者に依頼しての売却をおすすめしましたが、本来は相続前に売却しているのがベストでしょう。両親が借地権を持っているという方には、早めに借地権仲介業者に相談してみてください。

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