借地権を売却する際は更地にしないといけないの?
土地の賃借契約は「家を建てる」「ビジネスをはじめたい」「賃貸アパートを経営したい」など、さまざまな目的があって結びます。当然、家や事務所・店舗などが必要なので、建物が建てられていることがほとんどでしょう。
借地権を売却するとき、そのままで売却するのか、更地化することが必要なのか、どちらになるのかは非常に大きな問題。更地にするとなれば、取り壊し費用が必要だからです。
そこで、本コラムでは借地権者が借地権を売却する場合、借地を原状回復=更地化する必要があるのかということについて、ご説明しましょう。
借地権の売却で守るべき順序
借地権者が借地権を売却するときには、必ず地主にお伺いを立てなければいけません。勝手に売却することは不可能です。
もし無許可でほかの買主に売却してしまった場合、借地権は消滅してしまいます。ですから必ず地主の許可を受けてから売却するという順序を守りましょう。
しかし、これがまた少々やっかいです。じつは当人同士が直接交渉するとなると、なかなかひと筋縄ではいかず、最悪は交渉決裂、その後は断絶状態に陥ることも少なくありません。
ふだんから顔を合わせていて、良好な関係にあればその限りではないでしょうが、たとえば不動産業者を介しての関係で地代も振り込みという疎遠なものであれば、そうなってしまう危険性があるでしょう。どうしても立ち行かない場合には最終手段として、地主に代わって裁判所に借地権売却の許可を求めることができます。
借地借家法第19条において、借地権の売却許可が地主から得られないとき、借地権者が裁判所に許可を求めることで売却を許諾してくれることが記されているからです。しかし、いきなりこうした手段を取ることはできず、必ず順番として地主に対して粘り強く訴える必要があります。
折衝が苦手な方はここで心が折れてしまうかもしれません。個人で説得する自信のない方は、この時点で仲介業者に相談し、話を進めてもらったほうがいいでしょう。
更地化は買主次第
借地権は順序として地主に許しを得てから売却すること、承諾を得る努力をして、それでもダメな場合は裁判所に申請することで、裁判所から売却を認可されることをご説明させていただきました。つぎに売却が決定した場合、更地にしてからでないといけないのかについて言及させていただきます。
じつは借地権を売る相手は地主がベスト。借地権が戻ることで底地は私有地になり、活用も思いのままになり、土地の売却価格も上がり、売り先も増えるため、地主も歓迎傾向にあるからです。
しかし、この方法には残念な点があります。それは多くの買主が建物を現状のまま購入してくれるのに、地主に売却するときは原状回復を求められるのが半ば通常化していること。
その場合、借地権の期間が満了するまで待つことで撤去費用の負担を回避することができます。借地借家法13条により、契約満了時に借地権の更新がない場合、借地権者は借地を更地にすることなく地主に時価での借地権買取請求が可能だからです。
いわゆる「建物買取請求権」と言われる権利ですが、この権威を行使しようとする前に借地権の契約が満了するまで払い続ける地代がいくらかかるか計算してください。建物の解体・撤去費用は、建物の規模にもよりますが、通常50万円から100万円ほどが目安となりますので、地代の合計額を比較して撤去費用のほうが高い場合のみ建物買取請求権の行使をおすすめします。
借地権を地主以外に売却する場合は現状での売却が一般的ですが、これもまた買主次第で変わってくることがあるでしょう。当人同士で売却について話し合う場合、更地化してからなのか現状のままか、きちんと決めることが必要ですが、こじれてしまった場合、永い時間を要する危険性もあります。
専門の仲介業者に依頼する利点
借地権を売却する条件に更地にすることが加わるかは買主によることをご理解いただいたところで、最後にどうすれば更地にせずに(費用をかけずに)借地権が売却できるかをご説明しましょう。
借地契約の満了を待たずに地主に売却する場合、地主以外に売却する場合、双方とも更地にしなければ買取ってもらえないこともあります。こうならないように専門家の力を借りることがおすすめです。
借地権・底地問題に特化した業者であれば、多くの経験やノウハウがあるため、ことを荒立てずにうまく交渉してもらえることが期待できます。当人同士で直接話し合うよりスムーズに売却が成立することでしょう。しかし、原状回復が条件になった場合、費用負担を借地権者に請求するか否かは業者によります。
業者選びに「更地化費用は誰が持ち出すのか」は要チェック。借地権者の持ち出しにする業者は選択肢から外しましょう。
まとめ
借地権を売却する際は、借地を更地化する必要があるのかということについて、ご説明しました。建物買取請求権が行使できるタイミングであれば不要ですが、そのタイミングを待つことで撤去費用が地代を上回る危険性があること、そして第三者に売る場合には更地にせずに売却されることが多いですが、買主によって必ずしもそうでないこともがわかりました。
いずれにしても当人が慣れない折衝に四苦八苦した挙句に話しが立ち行かなくなるという最悪のパターンはできるだけ避けたいもの。更地にする費用が借地人の持ち出しにならないことをチェックした上で、借地権仲介業者に依頼することで解決へと導いてもらいましょう。