借地権で地主と裁判に!?借地非訟裁判を分かりやすく解説

公開日:2020/05/01  最終更新日:2020/05/19

借地権者の悩みの理由の大半は、「借地権を売却したいが地主が承認してくれない」「借地上で家の増改築をしたいのに、地主からNoとの返事が出た」ではないでしょうか。

このような事態になっても、借地権をどうにかする道が閉ざされたわけではありません。もうひとつの手段としてあるのが、借地非訟(しゃくちひしょう)という手続きです。これによって、地主に代わって、裁判所から認められることで、地主の承諾を得ずとも、あらゆる権利の譲渡・売却、借地における建物の建築・増改築に着手することが可能になります。

今回は、借地非訟という手続きについて詳しく解説させていただきますが、借地を使用していて、地主と折り合いがつかないとお困りの方は、ぜひ参考になさってください。

借地非訟とは何か?基本を説明

借地非訟手とは、借地人が地主に対して、あらゆる権利の譲渡・売却、あるいは借地における建物の建築・増改築に関係のある要求をし、承諾が下りない状況において利用される法的手続きです。これは、借地借家法・借地非訟事件手続きに則った基本事項なので、よく覚えておきましょう。

借地人は裁判所へ申し立て、裁判所は双方の事情などを組みながら、許可の可否を取り決めます。 許可を下す以外にも、裁判所が借地人に対して、地代変更・財産上の承諾料といった支払いを命じることも実際あります。

借地非訟裁判の事例

借地非訟の申立手続きについて、具体例として借地条件変更、増改築許可の申立を見てみましょう。

■借地条件変更の申立
借地契約では、土地に建設できるとされる建物の用途や構造について、制限をかけているケースもあります。借地人が条件変更を地主に要求し、合意を得ることができれば、契約条件を変更することが可能です。

しかし、拒否されてしまうことも考えられるでしょう。そうなったら、借地人は借地条件変更の申立を裁判所へ訴えることができます。裁判所がこの申し立てが妥当であると判断すれば、借地条件変更の裁判を起こせる状態になるでしょう。

■増改築許可の申立
借地契約には、借地に建設した建造物の増改築を行うにあたり、地主から承諾を得なければならない事例が多くあるので、気を付けなければなりません。

借地人の方から増改築を行う旨を地主に打診して拒否されると、代わりに裁判所に対して、増改築許可申立ができる状態になります。認定されたら、地主の承諾に代わる増改築の許可の裁判に持ち込むことが可能になるでしょう。

借地権の売却に関する事例

ここでは、「土地賃借権譲渡/転貸許可の申立」について紐解いていきたいと思います。これは、民法612条に定められていることですが、借地人が借地に建設された建物を、第三者へ譲渡・売却するには、地主から承諾を得なければなりません。

承諾が得られなければ、裁判所が相当であると認めてから、地主の承諾に相当する許可を得るための裁判を起こすことができます。ただし、地主にも一応介入権が与えられるので、このようなことに関わらずとも、裁判所が決定した価格で、第三者より借地権を優先的に購入できるようになっていることを覚えておきましょう。

続いて、「競(公)売にともなう土地賃借権譲渡許可の申立」についてです。裁判所の競売や行政庁の公売に際し、借地権付き物件を購入した場合は、地主と土地賃貸借契約の締結をしなければなりません。ですが、地主が認めなければ、買主は裁判所に対し、賃借権譲渡許可について申し立てることになるでしょう。

そこで裁判所が相当だと見なせば、地主の承諾に代わる許可の裁判が起こせます。ちなみに、先述した賃借権譲渡・土地転貸許可申立と同じように、地主は借地権を、裁判所が判断した価格で、第三者より優先的に購入することが可能です。

借地非訟手続きに移る前にできること

借地非訟手続きは手間も時間もかかり、借地主・地主、どちらにとってもただ消耗するだけで、リスクばかりが目立ちます。そのため借地非訟は最後の手段となる手続きなのは否めません。

相手方とトラブルが起きている借地権や底地は、いずれ借地権の売却や、建物の建替えを施すことが決まった場合、非訟手続きに発展する可能性が、十二分にあるというのは否定できません。ほかにも、相続事にでもなれば、子供たちまで同じトラブルを抱えさせることになりかねません。

借地非訟のトラブルの原因は、大体が互いに相手の立場を考えず、主張が一方通行になっていたり、借地権や底地について理解していないことから、主張がおかしくなっていることが挙げられます。また、地主と借地権者との間で、すでに何らかのトラブルがあって、ボタンの掛け違いによって事態がより悪くなるケースもあるようです。

ですが、いずれにしても、このままでいいとはどちらも思っておらず、互いに解決の糸口を探しているのは同じでしょう。

まとめ

借地権の売却を素人判断で行うのは危険です。必要なノウハウを兼ね備えた借地権仲介業者へ相談することで、その問題を解決することができるでしょう。仲介業者に依頼することで、お互いの主張をぶつけるだけの一方通行になる状況を避け、売却の手続きが円滑に進みます。

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